トップページ 診療案内 各種プログラム こころのはなし ご家族 スタッフ募集 サイトマップ English
こころのはなし

こころの病気のはなし > 専門編 >皮膚むしり症

皮膚むしり症

皮膚むしり症

Excoriation disorder

 

疾患の具体例

21歳、女性。13歳頃から顔にニキビができ、それをつぶしているうちに、皮膚をむしる行為が止められなくなりました。毎日1時間以上も顎や頬の皮膚をむしるため、それらの部位は傷だらけです。ストレスや不安感が強い時は、特に皮膚をむしりたくなります。数年前から皮膚科を転々と受診しており、皮膚科医から精神科を紹介されました。

 

特 徴

皮膚むしり症は、かゆみが生じる身体疾患や皮膚疾患ではないにもかかわらず、自分の皮膚を繰り返しむしることを止められない障害です。よく対象となる部位は顔、腕、手ですが、多くの人が複数の部位で皮膚むしり行為をします。特定の部位をむしりすぎて損傷すると、別の部位をむしるようになります。自分の手でむしるほか、ピンセットや針など道具を使うこともあります。また、皮膚をこすったり強く抑えたり、刺す、噛む人もいます。患者さんによっては、引き剥がした皮膚を調べたり、もてあそんだり、口に入れたりします。

皮膚をむしろうとする直前には緊張感が高まり、行為のあとは満足感や快感、安堵感を得る人が多いようです。しかし、その後に後悔や罪悪感に苛まれると報告されています。患者さんは、皮膚むしり行為を恥ずかしいと思い、皮膚の損傷をしばしば隠そうとしますし、他人の前ではあまり皮膚をむしりません。外出を控えたり、イベントごとを避けたりする人も多いようです。

 

皮膚むしり行為をしたり、むしることを考えたり、むしりたい衝動に抵抗している時間は1日数時間におよび、仕事や学業、生活に支障を来します。皮膚をむしりすぎたために損傷や感染などの合併症が起こることもあり、まれに生命を脅かします。

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-5』では、皮膚むしり行為による著しい苦痛、仕事や生活などへの障害を診断要件としています。皮膚むしり行為は常に身体的苦痛を伴うわけではありませんが、自分でも抑えることのできない感覚や当惑、羞恥心といった精神的苦痛は、診断基準における苦痛に含まれます。

 

なお、皮膚むしり症は強迫症と似たところがあり、高い確率で併発します。しかし、強迫症は汚染や皮膚異常についての強迫観念から皮膚むしり行為に駆り立てられますが、皮膚むしり症はそうではありません。また、皮膚むしり症は皮膚をむしったあとに不安が減少し、快感を感じることがありますが、強迫症でそうしたことはほとんどありません。

 

有病率

成人の皮膚むしり症の生涯有病率は、一般人口において1.4%か、それよりやや高いと推定されています。また、この障害のある人の3/4かそれ以上は女性です。

 

経 過

多くの場合、皮膚むしり症は青年期に発症します。特に、思春期の始まりと同時期か、それに続いて発症することが多いようです。最初は、にきびなどの皮膚科疾患に伴って始まることが非常によくあります。通常は慢性化し、もし治療を受けていなければ、多少良くなったり、悪化したりします。症状は常に出ているとは限らず、人によっては数週間や数ヵ月、数年の間だけに出現したり、消えたりします。

 

原 因

遺伝要因と生理学的要因:皮膚むしり症は一般人口に比べて強迫症を持つ人や、その第一度親族に多く見られます。また、皮膚むしり行為は、不安や退屈な感覚が引き金となることがあります。

 

治 療

この障害の治療は難しく、有効な治療法のデータはほとんどありません。しかし、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)など、いくつかの薬物が有効という報告があります。ほかに心理的治療と身体的治療を組み合わせることで、有効性が高められるかもしれません。皮膚を物理的に保護することが皮膚むしり行為の予防になり、悪循環を断ち切ることにつながる場合もあります。

ただ、ほとんどの患者さんは症状を恥ずかしい、あるいは治療法はないと思い、受診に積極的ではありません。

 

診断基準:DSM-5

A. 皮膚の損傷を引き起こす繰り返される皮膚むしり行為

B. 皮膚むしり行為を減らす、またはやめようと繰り返し試みている。

C. 皮膚むしり行為によって、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

D. 皮膚むしり行為は、物質(例:コカイン)の身体的作用または他の医学的疾患(例:疥癬)に起因するものではない。

E. 皮膚むしり行為は、他の精神疾患の症状(例:精神病性障害における妄想または幻覚、醜形恐怖症における外見の欠陥または欠点を改善しようという試み、常同運動症における常同運動、または自殺目的以外の自傷企図)によってはうまく説明できない。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 (医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』 (メディカルサイエンスインターナショナル)

こころのはなし こころの病気の知識 こころの病気のはなし-1こころの病気のはなし-2こころの病まめ知識福祉用語の基礎知識 お役立ち情報自立支援医療制度デイケア社会資源情報社会資源情報こころの健康アラカルトクリニック広場デイケア通信患者様の活動リンク集 トップページへ