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こころの病気のはなし > 専門編 > 出生前のアルコール曝露に関連する神経行動障害

出生前のアルコール曝露に関連する
神経行動障害

出生前のアルコール曝露に関連する神経行動障害

Neurobehavioral Disorder Associated with Prenatal Alcohol Exposure

 

特 徴

「出生前のアルコール曝露に関連する神経行動障害」(ND-PAE)は、胎児期に母親がアルコールを摂取したことによって引き起こされる神経認知や行動、適応的機能などの障害です。アルコールは先天異常を発生させる可能性がある物質で、胎児期に曝露されると中枢神経系の発達や機能に異常をもたらすことがあります。この障害は、胎児期のアルコール曝露による発達上の障害全般を包含する新しい概念で、身体的な障害(例:胎児アルコール症候群の診断に必須である顔面異形症)の有無を問いません。

 

ND-PAEの診断は、過去の診断的評価(例:心理的あるいは教育面での評価)、病歴、本人または周囲の人からの報告などから裏づけられます。

胎児アルコール症候群は、出生前にかなりの水準のアルコール曝露があったことの証拠と見なされています。もっと少ない量のアルコールの影響については、今後の研究課題とされています。あるデータによると、妊娠がわかる前後で軽い飲酒(妊娠中の1か月あたり1〜13杯、一度の飲酒期会で2杯以下)の既往が必要かもしれないと示されています。

 

ND-PAEの症状としては、全般的な知能面の著しい障害、または神経認知機能のいくつかの領域における障害があります。具体的には、遂行機能(ものごとを成し遂げる能力)、学習、記憶、視空間推論などです。また、気分あるいは行動制御障害、注意欠如、あるいは衝動性制御の障害によって自分をコントロールすることが難しくなるかもしれません。さらに、適応的機能の障害として、コミュニケーション上の欠陥、社会的意思疎通や相互作用の障害が含まれることがあります。日常生活上の技能(食事や入浴、着替えなど)や、運動機能面での障害もあるかもしれません。

その結果、学校生活が破綻したり、仕事に就いてもうまくうまくいかなかったり、違法行為や依存的な生活状況になったりすることがあります。

 

ただ、年齢が低いうちは正確な評価が難しいかもしれず、3歳以下の診断は延期することが適切とされています。学童期になると症状が顕著になり、この障害を診断しやすくなるようです。

 

※注意

ここに掲載した一連の基準は臨床現場で用いるためのものではありません。DSMの公式の精神疾患診断として採用するには証拠が不十分ですが、今後の研究のために専門家によって示され、検討されている案です。

 

有病率

「出生前のアルコール曝露に関連する神経行動障害」の有病率は明らかになっていません。しかし、アメリカでは、出生前のアルコール曝露による何らかの病態が2〜5%と推定されています。

 

経 過

この障害の経過は、発達段階によって多様です。出生前にアルコール曝露を受けた子どものおよそ半数は、3歳までに明らかな発達遅延がありますが、他の子どもは就学年齢になるまで中枢神経の機能不全を示さないことがあります。通常、これらの子どもたちは就学年齢になると学習困難、実行機能障害、統合的言語機能に関する問題がより明らかになり、社会的技能の欠陥や挑戦的行動はより著しいものとなります。学校の勉強が難しくなるなど、求められることの水準が複雑になるにつれ、大きな欠陥が明らかになっていきます。

なお、この障害による機能障害は生涯にわたって続くことが多いようです。

 

原 因

出生後の物質使用に関連する生理学的影響、他の医学的疾患または環境的なネグレクトに起因する障害:

出生後の医薬品やアルコール、その他の物質の使用による影響、外傷性脳損傷、または他の神経認知障害(例:せん妄、認知症)などの医学的疾患による障害、または環境的なネグレクトが含まれます。

 

遺伝性または催奇性の病態:

ウィリアムズ症候群、ダウン症候群、またはコルネリア・デ・ランゲ症候群などの遺伝性、および胎児ヒダントイン症候群、母体のフェニルケトン尿症などの催奇性の病態は、似通った身体的・行動的な特徴を示すかもしれません。

 

診断案:DSM-5

A. 妊娠の確認以前も含む、妊娠中の最小限以上のアルコールへの曝露。妊娠中のアルコールへの曝露の確認は、母親の妊娠中のアルコール使用についての自己申告、医療やその他の記録、または臨床的監査等により得られることがある。

B. 以下のうち1つ(またはそれ以上)によって示される、神経認知機能の障害:

  1. 全般的な知能面での成績の障害(すなわち、IQ70以下、または包括的発達評価における標準化スコアが70以下)
  2. 実行機能障害(例:計画性および秩序だった行動の足りなさ、柔軟性の不足、行動制御の困難)
  3. 学習障害(例:知的水準から考えられるよりも学業成績が低い、限局性学習能力低下)
  4. 記憶障害(例:最近学んだ情報の想起に関する問題、繰り返し同じ間違いをする、長い言語的な指示・説明を記憶することの困難)
  5. 視空間推論の障害(例:まとまりのないまたは計画性に乏しい描画あるいは構成、左右の判別の問題)

C. 以下に示されるもののうち1つ(またはそれ以上)の自己制御の障害:

  1. 気分あるいは行動の制御の障害(例:気分の易変性、否定的な感情またはいらいら、頻回の行動上の爆発)
  2. 注意欠如(例:注意の転換が困難、精神的努力の維持が困難)
  3. 衝動性制御の障害(例:順番を待つことが困難、規則を守ることが困難)

D. 以下のうち2つ(またはそれ以上)の適応的機能の障害(このうち、1つは1か2であること):

  1. コミュニケーションの欠陥(例:言語獲得の遅延、話し言葉の理解の困難)
  2. 社会的意思疎通および相互作用の障害(例:見知らぬ人への過剰な親密さ、社会的合図を読み取ることの困難、社会的結果を理解することの困難)
  3. 日常生活技能の障害(例:排泄、摂食、入浴の遅延:毎日の生活予定を行うことの困難)
  4. 運動能力の障害(例:微細運動発達の不良、粗大運動発達里程標への達成遅延または現在の粗大運動機能の欠陥、協調とバランスにおける欠陥)

E. 発症時期(基準B、CおよびDにおける症状)は小児期である。

 

F. その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、学業的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

 

G. この障害は、出生後の物質使用(例:医薬品、アルコールまたは他の薬物)に関連した直接的な生理学的影響、一般の医学的疾患(例:外傷性脳損傷、せん妄、認知症)、他の催奇性物質(例:胎児ヒダントイン症候群)、遺伝的病態(例:ウィリアムズ症候群、ダウン症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群)、または環境的なネグレクトではうまく説明されない。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

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